人は慣れたことで失敗する

先日、名古屋の社長さんとお話する機会がありました。その方とは公私ともどもお世話になっているのですがその席でとても含蓄のある話をしていただいたので今日はその話をしたいと思います。

人は慣れたことで失敗する

とても当たり前なことですが、人は得意分野で勝負すべきです。前々から「自分はなにがしたいのか」「自分はなにができるのか」を常に考えるようにしています。したいこととできることが一致している人はとても幸せです(メジャーリーグのイチロー選手・松井選手やNBAの田臥選手なんかきっと幸せだろうな)。ところが、慣れていて自信がある分野で、また人は失敗するものだということを深く心に留めておかないととんでもない事態が引き起こされることがあるものだと言うのです。

車の話で恐縮ですが、確かに思い当たる節があります。「自分は舗装路は得意だ。だからこのラリー競技では失敗はあり得ない」などと不遜な態度で参加したときに限ってコースアウト・リタイヤするケースなどは、その典型と言えるでしょう。うまくいく場合は無心で一生懸命やっている時です。結果が後からついてくるのです。意識してその一生懸命とか無心とかが作り出せたらどんなに楽でしょう。それを「平常心」というのでしょうか。

物を売ってはいけない

小売業の方には「え?」と思われる言葉かもしれません。しかしその社長さんが言うには「どんな業種のどんな商売でも、売っているのはプロセスと感動だ」と言うのです。100円ショップの品物が「どうしてこんな素敵な商品が100円で買えるの?」「どうやったら100円で売れるようにコストを抑えられるの?」というプロセスに関わる感動(というと少し大げさですが)を感じた方はおられると思います。また、関東のとある万年筆を専門に売っている店で自分にピッタリとマッチした万年筆を購入した時の店員の応対を含めた深い満足感、これは価格ではなく満足感という感動だとも言っていました。

確かに「売ろう売ろう」としている店に対して、引いてしまう気分というものが確かに存在します。もう一度そこで買おう、食べに行こう、そこのサービスを受けようと思う気持ちには確かに商品そのものではなく、そこで受けるサービスやその商品そのものが提供されるに至る過程、店員のサービスなど、単純に価格ではないものが含まれていると思います。「もの(商品)」ではなく「ものの形をしたサービス(と感動)」を提供すると考えた方がよさそうです。製品の魅力で勝負される方も、その製品に込められている付加価値がすなわちサービスなわけで、結局はサービスを提供しようとする「人」だなと思わざる得ませんでした。人は「満足」に対して対価を支払う、このことを大切にしたいと思います。