CIOとシステム開発

今回はCIO(chief information officer:最高情報責任者)が果す役割について述べたいと思います。CIOという職務は言葉が示すとおり「企業の情報に関するあらゆる方針と実施について責任を持つ人」です。どうしても「情報」という言葉からプログラムやパソコンについての知識を豊富に持つ人というイメージを持ちがち(事実、システム担当から昇格した方も以前は多かったようです)ですが、最近は財務担当だった方・工場の業務改善を担当された方・売り場の主任だった方などがCIOとなり成功を収めているケースも多いようです。どうしてなのでしょう。

企業の使命は「利益を出すこと」です。売上を上げることでも沢山売ることでもありません。あくまでも「利益」です。その利益を増やす方法は大きく分けて2つです。

  • コストの上昇分より多くの売上を出す。結果利益は増大する
  • コストを削減する。結果同じ売上でも利益は増大する

外部に向かう面が売上増で内部に向かう面がコスト削減と言ってよいと思います。これらはシステム開発の担当者が(単独で)実施できる内容ではありません。なぜなら「何々をこうすれば利益が上がるはずだから、ここを改善しなければならない」「このようなニーズに対しこのようにアプローチすれば利益は上がるはずだから、このような仕組みが必要だ」といった仮定に対し検証することが業務の改善というもので、システム担当にとってはその仮定はどうでもよく「何々が必要だから」に対し「どうやって提供しようか」という部分しか興味がないからなのです。よって前提(仮定)を深く理解しないまま「何々が必要だから」という要求に答えようとして、中途半端なシステムが過去膨大に生み出されてきたわけです。

なぜ上記のような話を長々と書くかというと、システムに精通していない財務の方や営業の方は自分達なりの方法で業務改善に取り組み、追い込んで追い込んだ結果として「この部分は人間よりもコンピュータにさせた方が経営的に(コスト的に)有利だ」というものをシステム化しています。まず「業務改善」ありき、なのです。「システム化すれば業績は向上する」というアプローチは残念ながらほぼ100%成功しません。どうしても必要だからシステム化に着手すべきなのです。

ちょっと「IT情報マネジメント用語事典」から流用します。

CIOに求められる機能は、経営戦略の一部としての情報化戦略を立案・実行すること、逆に情報技術に基づいた形で企業に適切な経営戦略を提案すること、部門間や外部との調整を行い業務組織や業務プロセスを改革して情報システムに適合させること、そして情報部門を含めて全社のIT資産(人材、ハードウェア、ソフトウェアなど)の保持や調達を最適化することなどである。

「経営戦略の一部としての情報化戦略を立案・実行」とあります。つまり、プログラムがどうのこうの言う前にまず「経営戦略の一部としての情報化戦略」が必要です。これがCIOに求められる最大の要件であってシステムの内部構造や詳細な知識についてははっきり言って不要なのです。あっても問題ないですが、あるばっかりに経営の視点(=業務改善)からものを見る・考えることができないケースもありますのでCIOでおられる方はいつも経営の視点からものを考える必要があります。その上で情報化の戦略(方針)を実施することが大切です。

「でも、システムの知識がないとシステム開発会社の言うことが本当に正しいかわからないじゃないか」という疑問はもっともです。そのために現在はRFP(提案依頼書、要求仕様書)というものを開発会社に対して発行します。「自分たちが必要としている業務システムはこのようなものだ」「予算はこれくらいで、いついつまでに欲しい」「もっとよい提案があるなら出して欲しい(これはRFI:情報依頼書とも言われます)」これらは自分たちが欲しいものなのですから自分たちが理解しておくべきでしょう。最高情報責任者なのですから。