自動車業界の現場から
不祥事続きのM自動車の5月の販売台数は過去最低となったようです。ラリーが趣味の領域を超えて好きな織田としては、誠に残念な思いがあります。現在の自家用車販売の不振は、自動車自体の問題と言うよりは、ブランドイメージの失墜といった意味合いが強いですね。隠すとためにならないことは十分に理解しているメーカー、それだけの過去を背負っている会社だと思っていましたし、後はいかに魅力的な車を提供できるか、だと思っていました。
モータースポーツ関係の知人を始め、様々な方に将来を予想していただきました。つぶれると予想された方とつぶれないと予想した方、今のところ半々といった感じです。つぶれると予想した理由は簡単「今現在、M自動車はなくてはならないメーカーではないから」という辛らつなものです。反面、つぶれないという予想の根拠は「関連企業が総力をあげてサポートするからつぶれない」というものです。どちらも一理あってちょっと判断つきにくいですね。
さて、皆さん実は日本有数の優良企業、世界に名だたるT自動車も昔不正をしたことがあるのをご存知でしょうか。世界ラリー選手権で空気の吸入パイプを不正に加工し、沢山の空気を吸い込めるようにしたという事件でした。悪質な事件とみなされ1年間の出場停止、すべての年間ポイント剥奪という厳しい処分が下されました。当時の我々には非常にショッキングな出来事でした。ラリー業界全体がショックを受けた事件であったと覚えています。
なぜ、今更こんなことを書くかというとその後の状況に見習う点が多いと思ったからなのです。厳しい処分の後、新たな車で参加してきたT自動車は見事な復活をとげ、年間チャンピオンこそ逃しましたが非常にポテンシャルの高い競技車両を作ってきました。後年、整備士の問題不正流出事件でもいち早く厳しい内部処分を行い、その自己管理の見事さで不正そのものよりも潔さと行動のすばやさで我々をうならせたものです。
ところがM自動車のディーラーでは、現在非常にモチベーションの著しく下がった状況がもれ伝わってきます。カーショップからリコールの状況について問い合わせるが、いちいち質問しないと対応が帰ってこない、当然用意されているはずの代車が用意されていない、電話で確認した担当から別の担当に引継ぎの連絡が伝わっていない・・・いったいどうしたというのでしょう。実際に車を買う現場が、今までの客を大切にしないでどうやって今の状況を改善できるというのでしょうか。今こそ徹底した顧客サービスを実施し、少なくとも現在のお客さまが次もM自動車を購入してもいいな、と思ってもらえるサービスをすべき時です。それとも、現場はすでにあきらめているのでしょうか。将来はないと思ってしまったのでしょうか。それらはすべて経営陣の対処に問題があるということでしょう。
現場で実際にお客さまと接するサービスマンや営業マンには、今の状況の責任は少ないように思えます。それよりも、下がりつつあるモチベーションをいかに下げないで今以上のサービスを展開し、今を我慢し、次につなげるサービス展開を考えなければならないのは経営陣の方々でしょう。高い報酬はそのために支払われているはずです。現場の状況が予想以上にひどい今、本当に経営陣の力が試されていると思います。このまま終わってほしくないので、辛口になってしまいました。長年織田が乗り続けた車のメーカーであるという思い入れ以上に、技術的にも歴史的にも十分やっていけるメーカーと信じたいです。奮起を期待します。