プログラマーの行方

織田は、元プログラマーです(今でも少しプログラマーかな?)。自分がプログラマーであったことはとてもよい経験であったと思います。作ったプログラム(システム)が動く喜びや、物事を論理的に考える思考方法の訓練ができたことや、問題を考えて考えて考えたあげくに解決できたことなど、苦しさの中に楽しさがあったことは確かです。さて、プログラマーにとってのプログラムってのはなんなのでしょうか。織田が愛読している「CNETJapan」の中のコラム(Blogって今は言うらしいです)に梅田望夫さんが担当される「英語で読むITトレンド」ってコーナーがあるのですが(ちょっと英語は難しいですが、とてもためになります)、そこで

(----------長文引用----------)

「雇用なき景気回復とITエンジニアの雇用をめぐる大転換」で、

「これまで、ITエンジニアにとっての花形の職場、就職先はITベンダーであったわけだが、ひょっとするとこれからそれがITユーザの方に移行していくのではないか。それがITエンジニアの雇用をめぐる大転換なのではないかというのが、いま僕が考え始めている仮説である。間違っている可能性はかなりあるのだが、今のところ、こういう仮説を置きながら、しばらく考え事をしてみようかという気分になっている。」

「「自社の事業にITを活用してその結果自社事業を繁栄させることに対する対価を得る」ユーザでの仕事に、「ITを道具やインフラや技術そのものとして他社に提供して対価を得る」ベンダーでの仕事よりも、少なくともシリコンバレーでは、ITエンジニアが魅せられ始めているという現実がある」

(----------引用ここまで----------)

とのくだりがあります。実際織田が生で感じていることなのでドキッとしました。そうなのです。情報システム部とか電算課があるような企業や自治体では、真剣に「使える」システムを欲しています。様々なデータを様々な角度ですぐに見たいし、検討したいのです。「だから、そのようなシステムを提供しているじゃないか」と開発ベンダーさんはおっしゃいます。はい、その通りです。でも、お客は不満なのです。値段であり、使い勝手であり、スピードの面で。よく考えてみてください。どうして開発に半年も1年も必要なのですか?そこにデータはあるのに。どうしてそんなに巨額がかかるのですか?人を使うから?どうして欲しいデータがすぐ手に入らないのですか?そんな要求聞いてないから?…これって全部供給側の理屈だと考えたことないですか?そして、そこに新しい市場があるとは思いませんか?

コンピューターが世の中に普及して高々40年くらい、システムをどうのこうの言い出してまだ20年、インターネットが普及しだして10年ですよ。ま、はっきり言って枯れた技術とはとても言えないですよね。だから、ニセモノも山師もゴト師もいっぱいいてもしょうがないのだと思います。中世のヨーロッパでは金を作ろうと錬金術師がいたわけですよね、立派な商売として。そして、「いままではそれが当然と思っていたことが当然ではなくなる」ことも多々あるのです、そのような黎明期には。

ニセモノじゃないですけど、正しくもない。今は必要だけど、今に必要じゃなくなる。それは、供給側(開発)の視点で考えていても決して見えてこない部分です。需要側(顧客)の視点で見ないと、この転換は見えてきません。

将来、プログラマーの選択肢はITベンダーサイドで「開発ツールを開発」するか、企業(ITユーザー)サイドで「システムを開発」するかの2つに1つになると考えています(OSの開発や機械制御系なんかは「開発ツールを開発」に含んでいます)。そして、「開発ツールを開発」する仕事なんてそんなに多くはないですから、必然的に「システムを開発」する方が大半になるわけです。「なんだ、今も会社で受託したシステム開発やっているよ」と思っている人、値段で、使い勝手で、スピードで、今の10倍のパフォーマンス出せます?無理でしょ。でも、もうすぐ、10倍のパフォーマンスの要求が当たり前になって、あなたの仕事はなくなっていくかも。だって、現場ですぐにシステム開発できるような未来がすぐそこにあるのですから。さらにもっと言うと、「システムを開発」するためのプログラムスキルも将来不要になるかもしれません。おおっ、書いていてどんどん不安になってきた。多分当たるだろうなあ、この予測。

オフセット印刷が登場して、活字を拾う仕事はなくなりました。ワープロとコピー機が普及して、代筆やガリ版はなくなりました(激減しました)。和文タイプの仕事はなくなりました(激減しました)。年賀状ソフトとプリンタが普及して、年賀状印刷は激減しました。携帯電話が普及して、公衆電話は激減しています。新しいシステム開発ツールが登場して、システム開発ベンダーが将来なくなっても(激減しても)少しも不思議はありません。ただ、いつの世も企業の活動が続く限りは、他社より早く、他社より安く、他社より優れた商品を供給しつづけることはなくならないと思われます。ですので、そのための技術は決してなくならないでしょう。

プログラマーの皆さん、自分は将来どうやって飯を食っていくのか自信あります?これからプログラマーを目指す皆さん、5年後、10年後も考えましょうね。高いプログラムスキルを身に付けて「開発ツールを開発」するような企業に行くか、高い業務系のスキルを身に付けて企業の中で「システムを開発」する方向を選ぶか。どちらにしても楽な商売ではなさそうですね。だからこそ需要もあるのですが。