物流システムに学ぶ
仕事の関係で、実に様々な業種の方とお会いしてシステム改善のお話をさせていただいています。そんな中で聞かれるのことが多いものの一つに「その業種に精通しているわけではないのに、なぜ改善提案が可能なの?」という質問があります。経営者の方にしてみれば、どこの馬の骨ともしれない人物に本当に(システム改善を)任せてよいものか不安に思うのも無理もありません。そんな時にお話するのが「物の流れと金の流れを把握すれば、基本は同じです」ということです。今日はそのお話を少し詳しく説明してみましょう。
そもそも世の中の仕事の大半は「物」か「サービス」を提供してその対価を受け取っています。小売業の場合は単価の少ないものを沢山扱っていますし、我々のような業種は基本的にサービスそのものを扱っています(ソフトウェアという「物」を納めていますが、お客が受け取るのはそこから発生するサービスだと考えています)。そして様々な決済方法を通して対価を受け取り、企業の糧としているわけです。これは非常に大きな枠組み(農産物が消費者に渡るまでのような、国をまたいで行われているもの)から、ある部門の一つの事業(半導体の部品を生産しているようなもの)でも実は基本は同じ仕組みです。生産した物(サービス)が川の流れのように川上から川下へ順番に流れていって、対価は逆に上っていくというわけです。
これらを把握していく課程で大抵は非常に効率の悪い箇所にぶち当たります。
- 「毎回手書きで住所や名前を書き写している」
- 「伝票が多彩でしかも数が多い」
- 「決済手段が多くて専任者が必要」
- 「納品してから入金までの期間が長い」
- 「ある機械の生産性で生産量が決まってしまう」
- 「知りたい情報を取得するのに時間がかかる」
- 「対応が問題が発生してからの後追いになっている」
・・・実に様々な問題がそこには実在しています。リアルタイムに収益に影響を及ぼしているのです。
実はこれらは物流システム(物の流れと金の流れ)を参考にすると、鮮明に問題点が明らかになっていきます。どの部門がどんな情報を必要としているか、どの部門のどの作業の効率を上げると収益に影響するか、どれくらいの投資でどれくらいの効果が得られるか・・・
現在の物流業は驚くほどシステム化が進んでいて、リアルタイムで配送物の現在地点が把握できたりその場で決済が完了できたり、無人の配送センターが配送物の自動振り分けを行ったりが当たり前に行われています。必要な投資がきちんと効果を生み出しているわけです。
そんなわけで、業種に精通している方との違いは実はほとんどありません。「業界の慣習を知らないじゃないか」と言われる方もおられますが、慣習があったからこそ問題もあったという見方が最近は多く、慣習を排除することそのものが改善になったりしますので、これもハンディにはなりません。むしろ新しい考え方として歓迎されることも多いのです。物流の仕組みを念頭においてその業界を理解していくことは実に理にかなったやり方と考えられています。